神戸の熱血弁護士!「向井大輔ブログ」 法的ワンポイントアドバイス

急増する"申し込んでいない商品の一方的な送りつけ"トラブルへの対処法

"全く申し込みをしていない健康食品が一方的に代金引換もしくは振込用紙と共に送りつけられる"、というトラブルが昨秋から急増しています。

兵庫県生活科学総合センターによれば、平成24年4月~平成25年1月までの相談件数は昨年度1年間の倍以上とのことです。
(神戸新聞3月14日(木)朝刊より)

 

【トラブルの具体的内容】

●業者から突然電話で「注文を受けた健康食品を送ります。代金引換なので支払いをお願いします」と告げられる。

 

●「申し込んでいない」と断っても、何度も電話が架かってきて、脅される。

 

●主な脅し文句
 「注文した録音テープがある」
 「住所や名前を聞いている」
 「弁護士を連れて行く」
 「裁判をする」
 「年金、銀行口座、家財を差し押さえる」

 

このようなトラブルに巻き込まれた場合、何よりも
『受け取りを拒否すること』
『代金を支払わないようにすること』
を徹底してください。

 

この手の悪徳商法に対しては、受け取りを拒否するというのが一番です。
仮に受け取ってしまったとしても、一切代金を支払う必要はありません。
(仮に、注文を忘れていた、同居人が注文していた、という場合は、善良な業者であれば、判明した後に謝罪して支払えば大丈夫でしょう。)

 

以下に述べるとおり、このようなトラブルでは、法律上、代金返還請求が可能になることがほとんどです。
ですが、業者が雲隠れしてしまって連絡が取れない等の事態になれば、法律上は可能でも、現実的に回収できないリスクが発生します。

 

では、どのようにして受取拒否や代金支払拒否を行えばいいでしょうか。

 

【具体的対処法】

 

このトラブルへの対処法は、『電話で承諾をしてしまったか否か』で大きく2つに分かれます。

 

≪電話口で承諾してしまった場合≫
対処法:以下2つの主張とともに、着払いで返送する。
 主張①:クーリング・オフ解除
 主張②:錯誤無効、詐欺取消し、強迫取消し

 

≪承諾なく一方的に送りつけられた場合≫
対処法:原則14日間経過するのを待って自由に処分する。

 

以下、具体的に解説していきます。

 

≪電話口で承諾してしまった場合≫

この場合は、以下の2つの主張を行なうのと併せて、商品を代金着払いで業者へ返送してください。

 

 主張① クーリング・オフ解除(※)    

 ※消費者側からの、無条件の解除方法です(解除するのに理由が必要ありません) 。

 

この場合は、業者側からは、電話勧誘により売買契約が成立したと言われかねません。
ですが、電話勧誘販売による契約は、クーリング・オフ解除が可能です(特商法24条)。

 

さて、このクーリング・オフ。
よく誤解されているのですが、

「契約から8日間が経過したらクーリング・オフは一切使えない」

は間違いです。

 

電話勧誘販売業者は、場合に応じて、注文者に対して、申込書面または契約書面を交付しなければならないのですが(特商法18条、19条)、クーリング・オフの期間は、注文者が、業者からこの書面を受け取って初めてスタートします。

 

この点、実際のトラブルの現場では、このような悪徳業者は書面交付を怠っていることが多く、注文者がこれらの書面を受け取っていない場合には、クーリング・オフの期間がスタートしないので、たとえ契約から8日間を過ぎていてもクーリング・オフ解除が可能なのです。

 

しかも、この申込書面や契約書面は、法律によって詳細な記載事項が定められています。
仮に書面を受け取っていても、その書面が法律上の記載事項を守っていない不十分な書面である場合には、書面を受け取ったということに当たらないので、やはりクーリング・オフの期間がスタートせず、クーリング・オフ解除が可能です。

 

さらに、業者が、注文者に対してクーリング・オフができないと思い込ませるような言動や書面交付をしていれば、その場合も、そうした言動や書面を撤回しない限り、クーリング・オフの期間がスタートしないので、やはりクーリング・オフ解除が可能です。

 

クーリング・オフは口頭でも可能ですが、後で争われないように、内容証明郵便や配達証明郵便等で書面により行うとより確実です。

 

 主張② 錯誤無効・詐欺取消し・強迫取消し

万が一、クーリング・オフ解除が使えない場合でも、民法上の錯誤無効の主張(95条本文)、詐欺取消し、強迫取消し(96条1項)が可能です。

 

この場合も、内容証明郵便や配達証明郵便等で書面により意思を表示しておくとより確実です。

 

 

≪承諾していないのに送りけられた場合≫

まずは、原則として14日間、自分の持ち物と同じ注意をもって保管してください。
保管した後は、消費者側で、捨てるも使うも、自由に処分してもらって構いません。

 

法律上、一方的に送り付けられた商品については、送付された日から14日間が経過すれば、送付した業者は商品の返還請求ができなくなります(特商法59条1項)。

 

この14日間は、送り付けられた側では、他人の物ほど慎重に保管する義務はなく、自分の持ち物と同じ程度の注意をもって保管しておけば足ります(民法659条類推適用 "自己の財産に対するのと同一の注意義務"と言います。)

 

もし14日間も待てない、という場合には、こちらから積極的に業者に対して引取請求をすれば、その請求日から7日間の保管で同じ効果が発生します(要するに業者が商品の返還請求をできなくなるということ)。

 

そのようにして、業者側が返還請求できなくなれば、商品を受け取った消費者では自由に処分(使用、廃棄)してもらって構いません(※)。
 ※法律上は、返還請求権を喪失するということのみで、消費者が処分してもいいとまでは明記されていませんが、法的構成として、消費者に所有権が移転すると考えるか、業者側が信義則上責任を追求できなくなると考えるかは別として、消費者側による処分が問題とされる可能性はありません。

 

 

トラブル対処法の概説は以上のとおりです。


ただ、実際に業者相手に行動するとなると、方法の調査や対応に時間を要するとともに、何より慣れないことへの心労があるかと思います。

弁護士に代理で動いてもらわずとも対応できる場合も少なくありませんので、無料や安価な法律相談等を利用して、弁護士に具体的な対処方法をアドバイスしてもらうのが肝要だと思います。

みなと神戸法律事務所
代表弁護士 向井 大輔